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最後の瞽女―小林ハルの人生
桐生 清次
文芸社

尼崎市で起こったJR宝塚線脱線事故の大惨事の続報を伝える新聞の中に、4月25日にひっそりと息を引き取ったある老婆の記事がありました。

「小林ハルさん 人生の旅終える」(朝日新聞)。

小林ハルさん享年105歳。ハルさんが500曲以上もの瞽女唄(ごぜうた)を鮮明に記憶していたことに、多くの民俗芸能の研究者が驚き、口承文学(口伝えの文学)研究が進みました。この功績を受け、最後の民俗芸能瞽女唄の伝承者として人間国宝に選ばれました。

ハルさんは、生後まもなく白内障により視力を失い、9歳より、盲目で村々を回って三味線の曲に合わせて民謡を唄う瞽女(ごぜ)となり、旅から旅への人生。それも徒歩で70年間、50万キロ。延べ地球を10周もする想像を絶する旅を続けました。2歳で父を、11歳の時は母も亡くし、明治・大正・昭和を時代に翻弄されながらも懸命に生きてきたハルさん。その唄う声に多くの人々の共感を与えました。

現代は福祉も充実し、障害者への理解も深まり、生活の場にもバリアフリーが浸透しつつあります。しかし、かつては、「目が不自由な子が生まれるのは、先祖の因縁」などと、今では考えられないような障害者への偏見と差別があり、家族も傷ついた時代でもありました。この時代は、20年前にNHKで放送された連続テレビドラマの「おしん」の主人公おしんの生きた同じ時代であり、明治の女性の強さと、懸命に生きることの尊厳を感じます。

本書の中に、懸命に生きてきたハルさんの姿があり、いのちの尊さとは何か、優しさとは何か、私たちに生きる強さを教えてくれているように思います。

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