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文学全集を立ちあげる
丸谷 才一・鹿島 茂・三浦 雅士
文藝春秋

「立ちあげる」とは剣呑な題名だ。うるさがたの三著者からすれば、あるいは『問題な日本語』かもしれない。にもかかわらず選ばれたこのタイトルが鮮やかに示すのはこの一書の目的、つまり「メイキング・オブ・文学全集」である。

著者三人は、「いま世界と日本の文学全集を編集するならこう作る」という話し合いを繰り広げていく。お堅い問答かと思いきや、文壇ゴシップあり各人の思い出あり、「なんだかレストランでメニューを決めているみたい」に自由気ままに、ざっくばらんに往来する。そしてその結論はかなり過激だ。

「ちょっと待って。サン・テグジュペリはそんなに偉いの?」
「「失われた時を求めて」は四巻にはなりますよ。」「とにかく何巻になろうとしかたがない。あれは全部入れるしかないんだよ。」
「僕は鴎外?外には厳しいんだなあ。極端に言うと、「舞姫」も「即興詩人」も「青年」もいらない。」
「はじめにいったように、透谷は外す。だって、今読むと、本当につまらないでしょう。」
「正宗白鳥は入りますよ。逍遥なんかはなくてもしょうがないけど、白鳥は絶対。」
「僕は極端に言うなら、中島敦入れるなら、芥川はいらないと思う。」

大物・名作を快刀乱麻、読者も、著者同士でも、「えっ、ちょっと待って」の連続だ。

文学全集とはその時代に最も「使える」知の集成でなくてはならない。著者たちが熱い討論を通じて伝えようとしているのは、今を、そしてこれからを生きるための背骨の作り方、「時代の聖典(キャノン)の使い方」なのだ。

本書で完成した世界文学全集133巻、日本古典文学全集88巻、日本近現代文学全集84巻は、編まれることのない全集となるだろう。しかし、本書を道標として我々は、この幻の全集を「立ちあげる」ことができるのだ。1巻なりともぜひ、幻の全集を読んでみてほしいと思う。

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