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No.13 「高校生活と言語活動」
2019/7/2

【校長からの発信】
No.13 「高校生活と言語活動」


2019年7月2日 校長 浅井 千英

 

高等学校での学びは友人達と互いに学び合い、情報を共有して刺激しあい、学びの深さと広さを発展させていくことに意味があると私は思います。人間は一人で生きているわけではなく周囲の人々とともに自分を高めていくのです。

AIは確かに社会生活に大きな影響を与えるでしょう。しかしいくら人間の脳を模してプログラムして大量のデータを集めたところで、AIは人間にとってコンピュータというツールに過ぎません。このツールを維持発展させるためにはデータサイエンスの力が必要であり、このためデータサイエンティストという専門家が必要です。しかし日本ではこのデータサイエンティストを養成する高等教育機関が不足しています。

日本は国民総生産(GDP)で第3位であるにも関わらず、データ総生産(これもたまたまGDPとなる)で世界第11位です。ちなみに第1位から10位は米国、英国、中国、スイス、韓国、フランス、スェーデン、オーストラリア、チェコです。(ソース:日本経済新聞6月27日付)

日本は世界レベルの優れた研究者がノーベル賞を受賞しています。優れた研究成果を挙げていることは確かですが、ノーベル賞を受賞しない一流の研究者とそれを下支える研究者の数がアメリカなどに比べ極端に(1〜2桁)少ないのです。AIの時代を迎えて専門家(この場合データサイエンティスト)の数が極端に不足しているのです。

もう一つ注意しなければならないことは日本人の言語力です。まず母国語である日本語の読解力・表現力を鍛えることはAIを運用・活用する上で必要不可欠です。また、現代の世界共通語(lingua franca)である英語力を強化する必要があります。聞く、読む、話す、書く、の4技能はグローバル化する社会で相手を理解し、また自己表現するために重要です。どの言語であってもまずは読解力を伸ばすためには多読することが重要で、一つ一つの言葉にとらわれ過ぎず、意識の流れを理解し、そこから、文脈を理解する。その上でよく解らない言葉の意味を予想した上で辞書を調べることが効果的です。いきなり最初から辞書を見てもいろいろな意味が記載されているので、文脈(context)を理解して初めて辞書を効果的に使いこなすことができると思います。

高校時代は学習活動、受験準備や部活などに時間を取られることも多いと思いますが、細切れの時間を利用してでも多読により読解力、表現力を高めていれば、受験に必要な人間力向上にも効果的です。

学校は生徒が主体的に勉強する場であり、教職員の役割は生徒の背中を押すことで、必要に応じてコーチをするスタッフです。一方、生徒自身が知りたい心を持つことが基本であり、what, why, howなどで表現されるmindsetを維持することが大切です。

Project-based learning(PBL) は「課題解決型学習」とも呼ばれ、知識の暗記などのような生徒の受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養う学習方法です。生徒自身の自発性、関心、能動性を引き出すことが教員の役割であり、助言者として学習者のサポートをする立場で授業を進めて行きます。正しい答えにたどり着くことが重要ではなく、答えにたどり着くまでの過程(プロセス)を大切にする学習方法です。

これからの変化の激しい多様な社会で、職業は大きく変化すると予想されます。自らの力量を高めて、変化していく社会のニーズに効果的に応えていくことが生涯を通して重要なこととなります。

 

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