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No.21 「ウィルス感染症との闘い」
2020/4/25

【校長からの発信】
No.21「ウィルス感染症との闘い」


2020年4月25日 校長 浅井 千英

 

人類の歴史は感染症との闘いであるとも言われます。

今、新型コロナウィルス感染症が世界中に広がっていて、パンデミックの様相を呈しています。感染者、死者も毎日増え続けています。密室、密集を避けて、となりの人と身長分の距離を置き、換気をよくして、公衆交通機関などを利用した後必ず30秒、ハンドソープ等で手を洗う様心掛けてください。

歴史上ウィルス感染の記録はBC3000年ごろにチグリス・ユーフラテス川流域のシュメールというところで麻疹の流行があり、その後世界に広がっていったようです。日本で麻疹に記録は平安時代(AD1000年)で、シュメールから日本に麻疹が伝播するのに4000年かかっています。人口が少なく、物流も限られていた時代ではこれだけの期間がかかったものと思われます

歴史的な感染として記録されているだけでも、14世紀のペスト、15世期の梅毒、17〜18世紀にかけての天然痘、近代では結核やコレラ等様々な感染症と人類は闘ってきました。日本でコレラが大流行したのは19世紀でペリーの艦隊が持ち込んだと言われています。

感染症が歴史を変えたことも多くあります。15世紀の大航海時代、スペインのエルナン・コルテス等によるアステカの征服はスペインが持ち込んだ天然痘・インフルエンザ・チフス・麻疹といった感染症に免疫を持たないアステカ人が感染し、兵士が倒れたためとの見方もあります。

1755年からのフレンチインディアン戦争―実際はフランスとイギリスの戦いでしたが、イギリスは、フランスと同盟していたネイティブアメリカンに毛布を送るという厚意を示しました。しかし、実際はこの毛布は天然痘のウィルスを擦り込んだもので、免疫のないネイティブアメリカンは次々と亡くな利、これは世界最初の「バイオテロ」と言われています。

また、1918年のスペイン風邪では第一次大戦の戦死者より多くの人々が亡くなったと言われています。

現在は世界中に新たな感染症がたくさん出てきており、人々も感染症に対して漠然とした恐れを抱いている状況です。米国疫学研究所は1992年に『新興・再興感染症』という言葉を初めて使いました。その後の報告書ではこれに関わる13の要因を挙げており、そのうちの一項目以外は全て人間に要因があると言われています。

●微生物の適応と変化(これのみが人間要因ではない)

●ヒトの感受性

●気候と天候

●生態系の変化

●開発と土地利用

●人口動態と行動

●技術と産業

●国際的な旅行と流通

●公衆衛生対策の破綻

●貧困と社会的不安等

●戦争と飢餓

●政治的意志の欠如

●危険を加える意図

先進国の人間は特に綺麗好きで衛生状態も非常に良くなっています。A型肝炎は子供の頃に罹ると無症状か軽症で終わります。現在70歳以上では80%ぐらいが抗体を持っていますが、60歳以下では殆ど抗体を持っていません。下水道もなく悪い衛生状態では小児期に知らず知らずのうちにA型肝炎に感染して免疫を持つようになったと思われます。現在のように衛生状態が良くなって抗体を持たなくなり、ヒトの感受性がどんどん高くなってきたことは感染症が増加する要因の一つと考えられます。

ウィルスにせよ細菌にせよ、人と共に生きているのですから、人間の生活様式が変わればそれに従って変化するはずで、今はそれが顕著に起きている状況だと言えます。ウィルスは人間と共生するものです。真菌(カビや酵母の総称)は多細胞生物、バクテリアはその体のひとつの細胞が飛び出して独立したもの、ウィルスはその細胞の中の遺伝子が細胞から飛び出して独立したようなものです。もちろん遺伝子だけだと何もできませんから細胞の中に入ることで初めて活動できます。細胞から独立した存在だが、宿主の細胞に入ると遺伝子として機能する、侵入した細胞のタンパク質を利用するなどして活動できるようになる。要するにウィルスは人間の細胞を構成するパーツのような存在です。ウィルスは積極的に増殖するのではなく、環境を利用してふえられるなら増えていく。(例えば、ウィルスの宿主が死んだ場合、周りに乗り移るべき生きた細胞がなければウィルス自身が死滅してしまいます。)ウィルスの全てが病気の元になっているわけではなく、何かしら役に立っているものもたくさんあります。ヒトゲノム(人間の遺伝情報)の45%がウィルスやウィルスのようなもので構成されているのです。人類がここまで進化できたのもウィルスがいたからこそと言えます。

とはいっても現実にいる様々のウィルスに人間は感染して病気に罹ってしまう、例えば大腸には様々な大腸菌がいます。そこにウィルスが介在してコレラ菌から毒素遺伝子が大腸に運び込まれることで腸管出血性大腸菌(O-157)が出現しました。ウィルスは病気のもとともなりますが、他方、ウィルスがあるからこそ元気でいられることもあります。

例えば子宮で子供を育てるという戦略は哺乳類が繁栄できているキモだといわれています。実はその胎盤形成に必須の遺伝子がウィルス由来のもので胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしています。

またウィルスには他の病原体の感染をブロックしてくれるような存在でもあります。 例えばヘルペスのようにそれがいることで他の病原体の侵入をブロックしてくれます。

最後に規則正しい生活を心掛けて、決まった時間に食事をとり、睡眠を充分とって体調管理に気を使ってください。若いエネルギーを思い切り発散できない、もやもやとした感じの厳しい不安な日々が続きますが、いつかこの我慢が転じて素晴らしい学校生活がやって来ることを信じて頑張っていきましょう。

 

 

 

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