No.28「Mind the gap!」2020/12/1
【校長からの発信】
No.28「Mind the gap!」
2020年12月1日 校長 浅井 千英
今はどうかわかりませんが、私が1980年代後半に前職でドイツのデュッセルドルフに駐在していた頃、近隣の地続きの国へ出張する時、飛行機ではなく車で出張することも多く、また、イギリスやフランス、イタリアだと近隣の空港まで飛行機で行き、そこからレンタカーで出張先の顧客まで行くことがしばしばありました。そんな中で、ロンドンには度々いきました。顧客がロンドン近郊だと車は使わず、もっぱら地下鉄を使いました。列車の乗降時にはスピーカーで“Mind the gap!”と注意喚起がされます。エスカレータや階段では”Mind the step!という注意書きがありました。ギャップや段差に気をつけなさいとは当時の地下鉄は結構ホームと列車の段差と間隔があり、しかもイギリスの鉄道の大部分はパンタグラフではなく第三軌条から電気を取るので、ギャップに落ちたり物を落とすと大変なことのもなりかねない危険がありました。また、エスカレータやエレベータの箱は木が貼ってありました。昔は地下鉄列車内でも喫煙可でしたので、危険でしたが、みんなそれに慣れ切っていました。しかし、1987年、大英博物館の近くにあるKing’s Cross駅で、乗客の捨てたタバコがエスカレータに燃え移り、逃げ場を失った乗客、駅務員たちがが被災し、死者31人、負傷者100人という大惨事となり、これ以降安全性の見地から木製のエレベータ・エスカレータは廃止になり、禁煙も徹底されました。
コロナウィルス感染の予防には”Mind the social distance!” “Mind wearing a mask!”を徹底させてください。
“Mindfulness”、“マインドフルネス”という言葉をしばしば目にすることがあると思います。これは集中力を高めるための訓練で、毎日5分程度これを習慣づけることにより集中力が高まり、色々なスキルを向上させることができます。学力とか、運動競技能力、その他色々なPerformanceを向上させることができます。私自身も何かに集中しなければならない時、また何かが気になって夜寝付けない時に実践しています。やり方は色々あって、色々な”How-to”本にも出ていますが、簡単な方法はまず体の力を抜いてゆったりと楽な姿勢で、呼吸していることに集中します。深呼吸から始めて、普通の呼吸に戻っても、吸気は普通に、呼気する時にゆっくり吐く、何か気になることが思いついてもそのこと自体を気にせず、思い浮かんだことはそのままそっとしておき、あくまでも呼吸に気持ちを集中させる。この状態を3〜4分続けたら、今度はあるがままの自分を受け入れる、これで物事に集中できる心の状態が整います。最初のうちはやりにくさを感じることもあるかもしれませんが、慣れればちょっとした時にできるようになり、これを習慣づけることにより、学習するとき、読書するとき、競技するときの集中力向上、仕事の能率向上、仕事の成果向上に効果があります。
ロンドンの繁華街を歩いていると、信号のない一方通行路上の横断歩道に”Look left,”とか”Look right”という警告が横断歩道の手前に出ています。イギリスは日本と同じ車は日本と同じ左側通行で変わりないのですが、イギリス独特のロータリー交差点は慣れないと注意が必要で、中には交差点の真ん中にある大きいロータリー(円)の周りに数個のロータリー(円)があり、慣れないと戸惑うこともあります。私はイギリスではある契約で国内70カ所のプラントに結構な大きさの装置を納める契約がとれて英国内東西南北を車で駆け回ったり公私ともに良い思い出になる経験をしました。
ヨーロッパ大陸では右側通行ですので、道路の出る時、T字路から出る時、日本とは反対側から車が猛スピードでやってきます。また、国によっては道路の車線が引いてない(何年も前には引いてあったのが、完全に摩耗して消えている)高速道路もあり、また田舎道であっても一応高速道路であるにも拘らずトラックの積荷である生きた豚が高速道路上に逃げ出していることもありました。皆さんもチャンスがあればヨーロッパの田舎を旅することをお勧めします。自然が美しくローカルグルメも大変美味でボリュームたっぷりです。ただし安全には充分注意してください。最近は場所によっては治安が悪化して、特に外国人の多い名所では怪しい人間がたむろしているところもあるようです。
ある冬、やはり装置の据付で、フランスの古代ローマ時代からの都市ブザンソン(Besançon)に出張することになったのですが、車では時間がかかるので、飛行機でスイスのバーゼル(Basel)まで行き、そこからレンタカーすれば1時間ぐらいで到着するであろうという見込みで、飛行機に乗ったのですが霧のためバーゼルに着陸不可能となり、ローザンヌ(Lausanne)に着陸しました。レンタカーでも1時間余りとのことだったので、走り出したのですが、実はかなり奥深い峠越えであることが判明、深夜に国境を超えることになり、しかも雪が降り出しました。この辺りは深夜になると交通量が極端に少なく、10cmぐらい積もった山道をチェーン無し、同乗者なしで一人寂しく進むことになり、しかもスイス(この国は隣国すべてがEUですがスイスは未だ未加盟)とフランスの国境の検問所で、なんでこんな時間に日本人一人が来るのか相当疑われ、徹底した身体検査、荷物検査で約1時間止められることになりました。結局深夜1時ごろに目的地には到着したのですが、この間すれ違った車はわずか数台でした。雪の降る山中、林の中の一本道の深夜ドライブはドイツにいた5年間で最も思い出に残る旅の一つとなりました。
冬のヨーロッパは観光客も少なく寒さを除くと快適なのですが、飛行機、列車、車、どれを利用するにしても、霧や雪には要注意です。突然運行中止になったり、高速道路では視界不良で、極端に車間距離を詰め、先行する車の尾灯を頼りにしないと車線も見えず運転できません。冬は道路凍結による自動車事故で毎年死者が出ています。また、春と秋には夏時間と冬時間の切り替えがあり、移動の際は注意が必要です。
私は旧ソ連と中南米、中国以外ほぼすベての地域を旅しましたが、やはり旅をするならヨーロッパが良いと思います。皆さんも機会があれば海外生活を体験してください。単なる旅行では見えない違いを体験することができます。