No.31「今がチャンス グローバルな視点で変革を!!」2021/3/22
【校長からの発信】
No.31「今がチャンス グローバルな視点で変革を!!」
2021年3月22日 校長 浅井 千英
コロナウィルス感染症のパンデミックで経済活動に壁が立ち塞がっている今こそ、社会経済システムを見直すチャンス(Digital Transformationを推進することも含め)です。特に教育の重要性(特に国際共通語となっている英語での読解力、作文力、論述力)に着目してグローバルな視点で揺るぎない基盤で教育を再構築することが重要と考えます。日本の場合、高等教育の社会的な役割を見直し、誰でもがいつでも利用できるような仕組みを作り、グローバルな展開をするため、今よりも一桁も二桁も多いリソースを投入する必要があります。研究開発の役割も担うべき高等教育のグローバルな協調体制を構築すると同時に、STEAM―Science, Technology, Engineering, (Liberal) Arts, Mathematics―教育を充実させることが重要です。なお、Liberal Artsとは文学, 外国語, 哲学, 宗教, 倫理, 教育, 心理, 政治, 社会, 歴史, 経済, コミュニケーション, 環境などを含みます。また、学校教育については高等教育を秋入学とし、そのほかの初等中等教育についても順次秋入学を導入していくことがグローバル化推進のため不可欠であると考えます。
グローバル化に備えるためにも、色々な知識を組み合わせてINNOVATIONすることが大切になってきています。知識には形式知と暗黙知があり、これらの相互作用により知識は創造され、拡大され、人々に共有され、このプロセスが繰り返されることによりINNOVATION(新しい仕組みや物作り)につながると言われています。形式知とは文章や言葉で表現されるもの、暗黙知とは熟練技術者がいわゆる感を頼りに驚くべき精度で作業を成し遂げること、スポーツの世界でも名選手と言われる人はこのような暗黙知を持っていることがあります。これを言葉で表すことは不可能に近く、複数の人間が同様の体験をすることにより経験を共有する、またメタファーやアナロジーを使ってこれを見える化(形式知)にすることが必要です。特に日本人は暗黙知に頼るところが多く、せっかく積み重ねられた技術が世代交代で途絶えることが頻繁に起こっています。yはりグローバル化に備えるためにも、この暗黙知を形式知に変換し(知識創造し)、社会で共有していかねばなりません。
知識創造には日本での方法と、欧米での方法には異なる傾向があります。認識論的には欧米では形式知を重視し、日本は暗黙知を重視、存在論的には欧米人は個人中心であり、日本はグループ志向である。日本では分析的方法や文書化を蔑ろにする傾向があります。このため日本では過去の成功体験に執着し過ぎる傾向があると言われています。欧米は形式化・体系化されていない知識にもっと注意を向けるべきです。グローバル化により両者の違いを相互に補完することにより、知識想像力を高め、より良い結果を達成している事例が出始めています。
現在の日本の状況は、少子高齢化などによる社会保障費の負担増加、同じく少子高齢化と情報化社会の基盤整備の立ち遅れ等に起因する恒常的な歳入不足を補うため、赤字国債を発行しており、累積の赤字国債はコロナ対策の為もあって大幅に増えていて数年後にはGDPの3倍になるであろうと言われています。多くの国が累積する赤字国債を抱えていますが、日本はその中でも突出しています。2020年度累積債務残高はコロナ感染症対策等でGDPの2.5倍をこえる勢いで増えており、コロナ感染症終息が遅れればさらなる債務増も想定されます。この状態が改善されないといずれ国債の信用度が落ち、金利上昇が起きてこれによるインフレが起こる可能性は否定できません。その場合現在の低金利政策が不可能になります。
コロナウィルス感染症対策のため、債務が増加するだけでなく、企業業績も伸びず、中には倒産するところも出ています。このような環境では、人々は投資も躊躇し、銀行預金も低金利で旨みがない、その結果赤字国債により出回った資金が株式にまわり、実体経済とはかけはなれた異常な株高が起こり、何かの偶発的な事象で株式バブルが弾ける可能性もなしではありません。一部の経済の専門家は極端なインフレは起こり得ないとしていますが、上記で述べたようにこれも確実ではありません。仮にコロナが終息して、需要が供給を大幅に上回るような事態になれば多少のインフレが起こる可能性はあります。これが多少のインフレであればそれほど問題はありませんが、経済はいきものであり、インフレが暴走する可能性も上記の通り皆無ではありません。いずれにせよ赤字国債は税金の先食いという形で将来の世代に過大な負担をかけることとなります。1日でも早く財政の均衡(政府の歳入増で教育費や社会保障費、そして国債の元利払いなどを負担できる構造)を実現する必要があります。
開発途上国の人口が急増し、地球温暖化をはじめとする環境問題の顕在化、日本をはじめとする先進国の少子高齢化、そのほか貧富の差の拡大、富の偏在等各種の歪みを是正することが急務である状況で、GDP指標だけを頼りに人類の存亡を経済にかけることを見直す時期に来ています。その動きがSDGsであり、ESG投資の拡大であります。Society5.0を実現させ、人間中心の住みやすい環境を実現していかなければなりません。
したがって、グローバルな視点が、だからこそ重要であるということです。ちょうど、自分だけが幸せであれば周りの人が不幸でもいいという考え方が間違っているのと同じで、自国一国だけが幸福を享受することはあり得ません。今後、ますますその傾向は顕著なものとなるでしょう。SDGsの理念「誰一人取り残さない」がさらに浸透していくものと確信しています。
教育は未来に開かれているとともに、グローバルな世界にも開かれているのです。