No.5「皆既月食」2021/5/24
【校長からの発信】
No.5「皆既月食」
2021年5月24日 校長 森田 勉
今日5月24日から中間試験が始まりました。わずか三日間ですが、生徒のみなさんには日ごろの学習の成果を推しはかる絶好の機会です。しっかりと臨んでほしいと思います。そして、試験最終日の26日水曜日の夜、もし天気が良ければ、夜8時過ぎに皆既月食が見られます。不思議な色に変化する満月を見て、試験勉強の疲れを癒してもらえたら嬉しいです。東京地方の梅雨入りはまだのようですが、ここのところあまりすっきりとした天気ではないので、明後日が晴れることを祈っています。
みなさんもご存知だとは思いますが、この「月食」について、少し解説をしておきます。月食とは、満月のときに、地球が月と太陽との間に割り込み、月が地球の影の中に入り、月が欠ける現象です。一般に「食」とよばれる現象は「ある天体が他の天体の一部または全部をおおい隠す現象」と定義されています。地球が月をおおい隠せば月食というわけです。月が太陽を隠せば日食というのはご存知だと思います。また、星食や惑星による衛星の食など宇宙では「食」という現象は、それほどめずらしくありません。月が金星を隠す金星食やスバルを隠すスバル食なども有名です。
月食は地球の影に対して月が右側(西)から左側(東)に向かって猛スピードで動いていくので、月の左側から欠け始めます。そしてこの地球の影には本影(ほんえい)と半影(はんえい)とよばれる影があります(図1参照)。本影とは地球によって太陽が完全に隠される部分であり、半影とは地球が太陽の一部を隠している部分をさします(図2)。満月のすべてが本影に入る場合を「皆既月食」といい、一部分だけが本影に入る場合を「部分月食」といいます。月食は、太陽の光を月の間に割って入った地球が遮るわけですから、月と地球と太陽が一直線上に並ぶ満月の時にしか起きません。しかし、満月の時にいつでも皆既月食や部分月食になるわけではありません。その理由は、地球の公転面と月の公転面が角度にして5度ほどずれているからです。
国立天文台によると、今回の月食は、5月26日の18時45分に南東の空で始まり、21時28分に終わるそうです。皆既月食は20時09分から20時28分の20分間足らずの時間です。日本で皆既月食が見られるのは2018年7月以来、約3年ぶりのことですし、しかも、今回はスーパームーンと皆既月食のタイミングが重なる珍しい機会ですから、ぜひ見てほしいものです。皆既となった月は、「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれる、赤黒い色に見えるはずです。
皆既月食といっても完全に月が見えなくなるわけではありません。地球に大気があるために、光が屈折して月にあたるからです。このとき、青っぽい色の光は地球の大気で乱反射してしまいますが、赤っぽい光は地球の大気を通して屈折していき月面に届いて、それが反射します。私たちが夕焼けのときに空が赤くなる現象と同じようなことが起きているわけです。このため、皆既月食中は、満月が赤く輝いて見えるのです。これが赤銅色の月の正体です。
ところで、最後に問題です。図1を見ると、地球の影の中を満月が猛スピードで西から東に向かって突き抜けていくことがわかると思います。その速さを計算すると時速約3,600kmです。それでは、なぜ月は西から昇らずに東の空からのぼってくるのでしょうか? 今夜、もし空に月が輝いていたら、それを眺めながらじっくりと考えてみてください。