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No.2 小平奈緒選手引退に寄せて
2022/4/13

【校長からの発信】
No.2  小平奈緒選手引退に寄せて


2022年4月13日 校長 森田 勉

 

 また、私の大好きなアスリートが一人、現役生活を引退するというニュースが今朝の読売新聞に載っていました。その人とはスピードスケート女子の小平奈緒選手です。小平選手は、冬季オリンピックで金メダル1個、銀メダル2個を獲得しています。彼女も今年で35歳ということです。どんなに素晴らしい選手でも年齢的に衰えがきて、引退を余儀なくされることはわかっているものの寂しい気持ちになります。まずは、お疲れさまでした、そして有り難うございます、という気持ちを寄せておきたいと思います。

 小平選手は、ワールドカップで500メートルと1000メートルとを合わせて通算34勝を記録し、500メートルでは3度の総合優勝を飾っています。今年2月の北京オリンピックでは左足首の捻挫を抱えていた影響で500メートルは17位と力を発揮できませんでしたが、過去のオリンピックでは、2010年バンクーバーで12位、2014年のソチで5位、そして2018年の平昌で金メダルという好成績を上げています。とりわけ、2018年の平昌オリンピックでの500メートルで金メダルを獲得したレースは記憶に残っています。圧巻の滑りもさることながら、レース後に大会3連覇が成らず落胆していた韓国の李相花(イサンファ)選手に、寄り添って健闘を称えあう姿がとても印象的でした。小平選手の素晴らしい人間性が垣間見え、とても感動しました。このシーンは私ばかりでなく、おそらく多くの人の心を揺さぶったものと思います。

 今朝の新聞記事には、「常に学び続ける姿勢が、小平の強みだ」「五輪メダリストでありながらも謙虚さを忘れない姿に、、、」と書かれています。また「努力の女王」とも形容されています。そうした表現がまさにぴったりとくる話があります。

 先述したようにソチ五輪では5位、そして1000メートルでは13位という成績に終わった小平選手は捲土重来を期して、その後、単身でスケート大国のオランダに二年間留学します。そこで、力をつけ、勝つためのメンタル、全身の筋肉や神経にまで気配りする身体の管理、そして独創的なトレーニング等々、頂点を極めるための努力を積み重ねてきたそうです。小平選手の素晴らしいところは、謙虚に自分の弱点を知り、貪欲に学び続けていく気持ちを持ち、自分で自分の未来を切り拓いていく力があるということです。高校、大学、そして就職先を普通のスケート選手のようにエリートコースを単純に進むのではなく、自分が大好きなスケートに純粋に取り組んでいける環境をしっかりと見定めて、選択していったところにもそうした姿勢が表れています。

 小平選手は大学時代に次のような言葉をレポートに書いているとのことです。「学びはらせん階段。回って戻って来ときにはもう一つ上に来ている。上に上がっていくだけ」

 今年度から、高校の新学習指導要領の本実施が学年進行でスタートしました。新指導要領では、「主体的で対話的で深い学び」をコンセプトにしています。そうした力がないと、未来社会を生き抜いていけないからです。小平選手の生き方は、まさに主体的であり、多くの仲間やコーチングスタッフ等の関係者と協働して対話しながら、深い学びを実践しているのだと思います。しかも、スケートが大好きである、という意欲に基づいています。常に自己評価と客観的評価をすり合わせて実力をつけてきたので、精神的にも負けない選手に成長したに違いありません。

こうした選手は“生きた手本”です。10月の全日本距離別選手権をもって引退するとのことです。これからも選手として、そして引退後はどんな形でもよいから、ご本人が培ってきた経験を財産として、いろいろな人たちに引き継ぎ、還元してくれることを期待しています。

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