No.16 試合後の後片づけ2022/12/10
【校長からの発信】
No.16 試合後の後片づけ
2022年12月10日 校長 森田 勉
サッカー日本代表チームの活躍で夢と勇気をもらった人は少なくないでしょう。ここのところ暗いニュースが多かったので、とてもさわやかな気分にさせてもらえました。さらに、愉快な話が、試合後の後片づけを称賛されているというものです。
ワールドカップにおけるサポーターの試合後のゴミ拾いは、かなり前から有名です。日本代表がサッカーのワールドカップにはじめて出場したのが1998年のフランス大会で、それから今回まで7大会連続で出場しています。そのときから日本のサポーターが、応援に使ったブルーのゴミ袋に身のまわりに散らかったゴミを拾い集めて持ち帰る姿が、世界から称賛を受けています。今回は、11/20開幕戦のカタール対エクアドル戦を観戦した日本サポーターたちの後片づけが注目されたことを皮切りに、毎日のようにこの行為を褒め称えるネットニュースが飛び交っていました。そしてなんと、ドイツから歴史的な劇的勝利を飾った翌日の11/24には、大会組織委員会が清掃活動を行った日本人サポーターを表彰したのです。海外メディアはこうした行動を大きく報じていますが、先述のように過去のワールドカップでも、日本人による後片づけが脚光を浴びており、今や日本のお家芸?になっています(笑)。こうした行為に注目した海外メディアが日本人サポーターに「なぜ掃除をするのか?」と尋ねたところ、「片づけるのはあたりまえ」という言葉が返ってきて驚いたそうです。
そしてさらに、代表チームの後片づけも話題になっています。日本代表チームは、予選リーグから決勝トーナメント1回戦の全4試合、試合後はすべてロッカールームをきれいにして、日本語とアラビア語で『ありがとう』のメモを残したとのことです。森保監督が試合前日の記者会見で「帰るときは来たときよりも美しく」と語ったそうです。そして、立ち去った後にテーブルの上に置かれているのは、感謝の言葉と11羽の折り鶴です。かっこいいですね。試合も良かったですが、日本人の美徳を世界に知らしめてくれたことに感動しています。
こうした行為は、日本が世界に誇れる文化の一つだと思います。最近読んだ『はじめての論語』(安岡定子著 講談社+α新書)に、「江戸時代には、『江戸しぐさ』といって、雨の日に道ですれ違うときは、言葉をかけ合わなくても、お互いに傘をかしげる『傘かしげ』、狭い場所を行き交うときは、お互いに肩を寄せて歩く『肩引き』、乗合船などで、こぶし一つ分の腰を浮かせて席をつくる『こぶし腰浮かせ』などといった、お互いが心地よく暮らすためのすばらしい習慣があり、ほとんどの庶民ができていた」と書いてありました。こうした江戸文化は、何らかの形で現代でも私たちの心の中に生き続けているものと信じています。自分のことばかりでなく他者を思いやる心や、「立つ鳥跡を濁さず」のようにあとのことを慮る姿勢は、本当に好感が持てるものです。グローバル時代にあって、これらの日本文化はますますその輝きが増していくものと思います。本校の生徒のみなさんも、世界に誇れる行動を普通に発揮できるような人になってほしいと願っています