No.14 七夕伝説2023/7/7
【校長からの発信】
No.14 七夕伝説
2023年7月7日 校長 森田 勉
今日は期末試験最終日でした。生徒のみなさんは、お疲れさまでした。ほっとしていることと思いますが、テストは終わったあとも重要です。定期テストは、ここまで学習した内容の理解や思考力の到達度をはかる大切な機会です。来週返却されるテスト結果を見て、自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにしましょう。学びは、学び方を学びながら継続していくこと、それを自分の習慣としていくことが、これから先の人生を豊かにすることにつながっていくものです。そのことを忘れないでください。
とはいえ、気持ちの上では一段落、ということも理解できます。少しリラックスしてもらうための話題を提供しておきます。今日は七夕です。笹の葉に飾りや短冊をつけて、「ささの葉さらさら のきばにゆれる お星さまきらきら きんぎん砂子」と歌ったのはいつの頃まででしょうか? 短冊に「世界が平和になりますように」と思わず書いて願いごとをしたくなる今日この頃です。
ところで、この七夕、歌にあるようなお星さまを仰ぐのはなかなか難しいですね。それもそのはずでこの時期は毎年梅雨の時期で、雨空の毎日ですから。国立天文台のHPによると「七夕は旧暦7月7日の行事でしたが、明治の改暦により新暦(現在の暦)の7月7日に行うのが一般的となりました。そのため、現在の七夕の日は旧暦の七夕よりも約1ヶ月早くなっています」とあります。そして今年の旧暦7月7日は8月22日だそうです。
この日に因んだ「七夕伝説」はみなさんもよくご存じだと思います。大まかに言うと「恋に溺れて働かなくなった牽牛(けんぎゅう)という青年と織り姫という娘。怒った天帝が、二人が会えなくなるように天の川の両岸に離ればなれにしてしまいました。織り姫は泣いてばかりの毎日。天帝は、これから二人がまじめに働くことを条件に、年に一度、七夕の夜だけに会うことを許しました」という物語です。織り姫はまさに織姫星で、こと座のベガです。牽牛はわし座のアルタイルで彦星という名で知られています。どちらも一等星で、夏の夜、天頂近くに輝いて見えます。このふたつの星の間に見事な天の川が横たわっているはずです(東京では残念ながら見えません)。ですから七夕伝説は、まさに宇宙の遠距離恋愛物語ということになります。
日本では古くから、この日を、織り姫と彦星がデートをするということで、「星合(ほしあい)」とも呼びます。そして、藤原定家が次のような歌を残しています。
さえのぼる月のひかりにことそひて 秋のいろなるほしあひのそら
何やらロマンチックな雰囲気になってきました。ここでこれに水を差すような話を紹介しておきましょう。
ベガ(織姫星)もアルタイル(彦星)も、太陽と同じ主系列星という恒星の仲間です。ベガは地球から25光年、アルタイルは17光年離れています。そしてふたつの星の間はなんと15光年も離れていますので、光の速さでも15年かかりますし、新幹線で行くと約5千万年かかる計算になります。これでは1年に1回会うというのは無理ですね。

しかし、もし1年に1回何らかの方法で会うことができたと仮定しましょう。この1年に1回という時間は、ふたつの星にとってはどのくらいの時間に思えるでしょうか。ベガもアルタイルも約10億年の寿命があると言われています。10億年生きるふたつの星にとっての1年を、100歳まで生きる(人生100年時代)人間に例えてみると、わずか3秒に相当します。この時間を会えなくて寂しいとみるかそうでないとみるかはみなさんにお任せします(笑)。
旧暦の七夕は8月中ですから、台風さえ来なければ安定した天候のもと、きれいな星空を拝めると思います。当日晴れたら、ぜひ空を見上げて癒されてほしいと思います。