No.15 文部科学省指針から感じること2023/7/10
【校長からの発信】
No.15 文部科学省指針から感じること
2023年7月10日 校長 森田 勉
先週の7月4日付で文部科学省から、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の通知が発信されました。TVや新聞でも取り上げられていましたので知っている人も多いことと思います。それによると、生成AIには、個人情報の流出や著作権侵害、偽情報の拡散などのリスクがあり、思考力や学習意欲に与える影響への懸念について触れられ、その上で学校では「限定的な利用から始めることが適切」との見解が示されています。読んだ印象としては慎重な姿勢がうかがえる内容だと感じました。これは、指針の対象が高校ばかりでなく小学校までを含むので、致し方ないことです。
本校ではすでに6月1日付でHPに「学校法人明昭学園 岩倉高等学校 対話型人工知能(AI)利用ポリシー」を発信し、1.利用目的 2.正確性の確認、責任 3.プライバシー等の保護 4.啓発、共有 5.問題把握、対応 を明確にして主体的な活用を勧めています。すなわち、むしろ積極的に利用しつつ、学習の主体者は私たちであるという強い自覚を持っていくことをうたっているということになります。もちろん、利用規約(年齢制限や保護者同意等)の遵守は必要です。
※ チャットGPTの利用規約…13歳以上、18歳未満は保護者同意
もう少しわかりやすく言いましょう。文科省の指針では、例えば基本的な考え方の一つとして「真偽のほどは別として手軽に回答を得られるデジタル時代であるからこそ、根本に立ち返り、学ぶことの意義についての理解を深める指導が必要になる」と書かれています。しかし、私たちは、この「指導」の部分を「姿勢」と読み替えている、すなわち、学びは受け身でなく主体的なものであり、そこには自分の生き方に対する自覚や責任を持つことが求められているということです。
教育の大切な目的に「人格の形成=人間性を磨くこと」があります。仲間とともに主体的に学び、考え、創造しそして行動していく精神、すなわち「岩倉スピリット」を発揮し、その結果に責任を持つことが重要だということです。少し“力”が入ってきてしまいました(苦笑)。AIはあくまで道具であり、万能ではありません。最終的には自分で考え、判断し行動していくという原則をこの高校時代に身につけておくことが最も大切なことです。
終わりに、ある経営コンサルタントの言葉「インフラストラクチャーが変わると、何もかもが揺れ動く」を紹介してきましょう。この言葉の意味は、社会やビジネスの基盤となるインフラストラクチャー(基盤設備やシステム)が変化すると、それに依存する社会全体が大きな影響を受けるということです。例えば、テクノロジーの進歩によってインターネットが普及し、デジタル化が進んだことで、ビジネスやコミュニケーションの方法が大きく変化しました。このような変化によって、地域の産業構造や人々の生活スタイルにも変化が生じます。チャットGPTをはじめとする生成AIも大きな影響力を持っていると思います。私たちがこうした高度な技術をうまく使いこなすためには、人格的に安定していることつまり人間性が不可欠だということです。テクノロジーの影響力が増せば増すほど、そのテクノロジーをコントローするする人間性が求められていくことになります。生徒のみなさんは、高校生活において、あらゆる活動において、人格を磨き、人間性を高めていく責任があることを忘れないでください。それが主体的であるということです。