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No.19 「新年を迎えて」
2020/1/8

【校長からの発信】
No.19「新年を迎えて」


2020年1月8日 校長 浅井 千英

 

明けましておめでとうございます。

昨年の今頃は平成31年でしたが、今は令和2年です。僅か1年の間にいろいろな変化がありました。アメリカが仕掛けた貿易戦争は世界経済で負の連鎖を引き起こしている様です。地球温暖化はますます顕著になり、海水温の上昇、氷河の後退、両極の氷は減少し海水面は上昇、四季の気候変化の具合が従来と異なってきたこと、世界各地で従来では想像もできない様な集中豪雨をもたらし、北西太平洋(東経180以西)では超大型のTyphoon、東太平洋(西経180度以東の北太平洋)、大西洋、カリブ海、メキシコ湾ではHurricane, インド洋と南太平洋ではCycloneの来襲が頻発、各地で風水害を起こしています。また、夏季には世界各地で異常に高い気温を記録しました。旱魃や異常乾燥による自然火災で貴重な森林資源が焼失しています。

政治的にはポピュリズム、独裁政権の台頭が顕著です。また世界で最も富裕な人々の総資産額は全世界人口の下位半数にあたる35億人の総資産額とほぼ同じであり、7億人が飢餓に苦しんでいる現状があります。

世界はこの様な問題を内包しながらも技術面では未だ部分的、局所的ではあるものの急速に進歩していて、結果として世界全体は多様化しています。でもこのことに関連して気になることがあります。それは19世紀以来200年間技術的進歩と人口増に伴い、全人類のエネルギー総消費量は飛躍的に増大しており、もし全人類が現在の先進国の人々が一人当たり消費しているエネルギーを消費するようになると、地球温暖化はますます加速されると同時に、この地球上にあるあらゆるエネルギー源は遠からず枯渇してしまう恐れがあるということです。

ところでエネルギーとはなんでしょうか。世界の潮流は原子力発電を廃し、化石エネルギー(石油)の消費を抑制し、再生可能エネルギー(太陽光、風、潮流など)の利用を推し進めています。二酸化炭素の発生を抑制するためガソリンの代わりに電気や水素の利用を推し進めていますが、でも本当に効果があるのでしょうか?これらのために現状の太陽光や風力による発電には限度があり、火力発電所やプラントなど新たな設備投資が必要で、温室効果ガスの抑制も限定的になります。

エネルギー保存の法則は確かに正しいのですが、同時にエントロピーは増え続けるのです。壊れたコップは元には戻りません。エネルギーを使って材料から作り直す必要があります。エントロピーとは乱雑さの指数で、非常に簡単にいうと熱は必ず高い方から低い方へ流れますが、このときエネルギーは100%伝達されずロスが生じます。このロスが積りに積もってエントロピーの増大となります。熱効率100%の原動機は存在せず、必ず残余の熱が残ります。したがってエネルギーを利用して仕事をすると、必ず多少のエネルギーが失われます。このことはなんとなく経験的にわかるのではないかと思います。

アインシュタインの相対性理論によると、質量はエネルギーであると言われています。太陽は巨大な質量(地球の33万倍以上)を持ち、誕生してから約100億年間、超高圧、超高温で光と熱を発生し続けると言われています。太陽系ができてから現在46億年と言われているので、さらに50億年以上今のような光と熱を発し続けるであろうと言われています。太陽は実際には酸素がないので、燃焼しているわけではなく、太陽には大量の水素とヘリウムがあり水素原子の核融合によりエネルギーを発生させているのです。ヘリウムが多いのは水素の核融合の結果発生したものと考えられます。太陽内部での水素の核融合により発生したこのエネルギーは超高温・高圧の内部から約100万年の時を経て太陽表面に達します。水素爆弾(水素の核融合で発生したエネルギーを利用)数発で人類が破滅するとも言われている地球と比べて恒星である太陽はスケールが違います。太陽の最後(誕生から約100億年後)は赤色巨星となり、この段階で地球はその赤色巨星に飲み込まれていくとの予想が有力です。その後、白色矮星(white dwarf star)、黒色矮星(black dwarf star)へと変化してゆくと言われていますが、宇宙の誕生から今までよりずーっと長い期間になるので、正確にはわかりません。

参考までに太陽の光が地球に届くまで8分半かかります。今私たちが浴びている太陽光は8分半前に太陽表面を出発したものです。地球に届く他の恒星の光には数光年から数億光年かかって地球に届くものも多いので、太陽はそのような恒星に比べれば地球の非常に近く存在すると言えます。

いずれにしても、人類は生き抜くためにエネルギーを必要としますが、あまりエネルギーを使いすぎると、地球の寿命を縮めることとなります。特に生物に有害な放射線の発生を伴う核分裂の乱用は地球の破滅を招くことになります。エネルギーの大量消費に支えられた現代の快適な生活を経験すると、そのような生活を諦めることは簡単ではありません。

有害な放射線の発生や放射性廃棄物を伴わない核融合技術が開発されれば、このような技術は人類に有益なエネルギーを提供してくれます。将来このような技術が確立されることが期待されます。

余談

電磁波はエネルギーの高いもの(波長の短いもの)から低いもの(波長の長いものまで順番に、γ(ガンマ)線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波(マイクロ波、長短波、短波、中波、長波)があり、X線、γ線は人体への被曝は危険です。電離放射線で、このほかに粒子線(α線、β線、中性子線)があり、これらも人体には有害です。紫外線、可視光線、赤外線、電波は非電離放射線と呼ばれ、X線に近い高エネルギーの紫外線は被曝すると人体に害があります。 宇宙空間を飛び交っている宇宙線には電磁波の一部であるγ線、X線などと、粒子線が含まれ、太陽や、太陽がある天の川銀河系の外側にある別の銀河系にある超新星の爆発のあった場所から来ていると言われています。宇宙線を調べると宇宙の生育過程が解明できるヒントにもなると言われています。また、太陽そのものが超新星の爆発によりできた生まれ変わりとも言われています。宇宙線は人体に有害で、宇宙空間に人間が長期にわたって滞在すると、大量の宇宙線に被曝し、また無重力のため、骨が弱くなり、孤独感からくるストレスなどの影響もあり、生命に悪影響を与えますので、数ヶ月に一度交代するようにしています。宇宙線は大気圏に突入するときに大部分は消滅し、人体に有害でない程度の宇宙線量が地表に届きます。ただし、大気層が薄くなったり、大気の成分が何らかの理由により変化すると、有害な宇宙船が地表に届くようになります。ニュートリノなどの宇宙線は一兆分の1ミリという微細粒で、水素を含む物質、例えば水、である程度遮断されますが、大部分は地球を突き抜けていきます。ニュートリノを観測するため、岐阜県神尾鉱山内に宇宙素粒子観測装置があります。電磁波や宇宙線、重力、弱い核力、強い核力などについて興味のある人は専門書などで調べることをお勧めします。

 

 

 

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