No.5 水を運べる選手2022/5/11
【校長からの発信】
No.5 水を運べる選手
2022年5月11日 校長 森田 勉
連休も終わり、中間試験まで2週間ほど、早くも1学期の中盤に差し掛かってきました。勉強に集中できる時期に入ってきたと言えます。今年度当初に各自が掲げた目標をしっかりと呼び覚まして、それを成し遂げるべく、こつこつと努力を積み重ねていくように頑張ってください。
前号の『校長発信№4』で、元サッカー日本代表チームのイビチャ・オシム監督の話を書きました。オシム監督が残した言葉の中に「水を運べる選手」というものがあります。初めてこの言葉を聞いた時、一瞬、何だろうなと思ったことを記憶しています。オシム監督の意図とは違うかもしれませんが、私はこの言葉の意味を「気づき・気配りの利く選手」と解釈しています。もう少し噛み砕いて言うと、サッカーはチームスポーツなので、自分の役割を完璧にこなすことは大切ですが、それだけでは通用しません。チームにピンチが訪れたら自分のポジションを離れてでも味方の選手を助けにいかなくてはいけないときがあります。また、ビッグチャンスが訪れたらリスクを恐れず相手ゴール前まで労を惜しまず走り込んでいかなくてはいけないときがあります。心身ともに疲労が蓄積していく中でも、そうした状況を見て機敏に動き、サポートしたりフォローしたりできる選手であることが大切であるということです。これは、サッカーという競技を超えて、日々の生活の中でも、生きていく上でも応用できることです。
ところで、話は変わりますが、私たちには必ず自分の“花”というものがあります。この花とは、大きな意欲や要求と言ってもいいでしょう。人は誰にでも、自分がこうしたい、ああしたい、あんな自分になりたいという、“命の花”とも言うべきものを持っています。私は、人は誰でも努力すれば、その花を開花させることができると信じています。たとえ、すぐに結果に結びつかなくても、その努力をするという粘り強い気持ちや試行錯誤した行動の積み重ねが結晶化して、自分の中に貴重な財産として刷り込まれていくものです。それが何かほかのことに挑んだときに活きてくるわけです。そして、やがてはもっと大きな大輪の花を咲かせることにつながるものだと思っています。
この花は「自己実現」という言葉で置き換えることもできます。そのためには、「学び、考え、創造し、そして行動する」サイクルを何回も何回も繰り返していくことが必要です。とくに若さあふれる高校時代にこのサイクルを繰り返し、勇気を持ってトライすることが大事だと思います。前向きな失敗は「経験」という財産になるのです。すなわち花を咲かせるための土台を築くわけです。
そして、当たり前のことですが、人間は一人きりでは生きていけません。自分の“花”は他者に関わることでさらに大きく輝いていきます。つまり、その場の雰囲気を読み取り、状況打開のために他者に代わって、時には他者の分まで行動することも大切です。仲間の“花”に水を撒きにいく行為とも言えます。これこそ、まさしく「水を運ぶ」ということでしょう。
こうして、みなさんが仲間と共に、まさに色々な花を咲かせていくことができたら、本当に素晴らしいことだと思います。本校が、個性豊かなたくさんの花で満ち溢れることを強く願っています。これからの高校生活の中で、自分自身へもさることながら仲間への水運びも忘れないでください。