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No.21  9月末のトピックス(その1) 土曜プログラムの特別授業「東日本大震災から学ぶ」
2025/10/8

【校長からの発信】
No.21    9月末のトピックス(その1)
    土曜プログラムの特別授業「東日本大震災から学ぶ」


2025年10月8日 校長 森田 勉

 9月27日(土)の2,3時間目に土曜プログラムの特別授業「東日本大震災から学ぶ」が開催されました。今回のテーマは「命をつなぐ声を聞き 私たちにできる備えを考える」でした。このプログラムは、3年生の一ノ瀬君、桑原君、原田君と2年生の太田君が企画し、進行を務めてくれました。自ら考え、形にしてくれたことを、とても頼もしく思います。参加した生徒約11名と保護者13名、そして教職員4名が共に学び合いました。

 当日は、気仙沼から震災語り部の加藤英一さんにオンラインでご参加いただきました。震災当日の状況や復興への歩み、そして現在の地域の姿についてお話しいただき、その一つひとつの言葉に深い重みがありました。加藤さんに改めて感謝申し上げます。

 印象に残った言葉をいくつかご紹介します。

  • 被災時、感情の処置が追いつかないほどいろいろなことが起きていた。
  • そこにあったのは非日常の世界。多くの人とコミュニケーションを取ったから前進できた。
  • 生身の人と人との心の交流がないと生きていけない。日頃から目を見て心から話すことが大事。
  • 失ってはじめてわかること。失ったからこそ得られたもの。
  • 毎日毎日が奇跡なんだ。ライフラインはあって当たり前ではない。一瞬にしてなくなってしまうもの。
  • 人は錆びる。いくつになっても逃げるところを探してしまうもの。しかし、被災体験で忘れていたものを呼び覚まされた。困難にぶつかったら真正面から行くしかない。
  • 「備えよ常に」 一人ひとりがやること。
  • 人とのご縁を大切に、明日を信じて今日という日を精一杯生きること。

 最後に、小グループに分かれてディスカッションを行い、それぞれが「自分にできる備え」を真剣に語り合いました。

 今回のプログラムを企画した3年生の生徒3人の感想(①きっかけ ②苦労したこと ③やってよかったと思えること ④その他)を紹介します。

 

【一ノ瀬君】

① 私は部活動で怪我をしてしまい、行動力をどこに向ければいいか分からなくなっていたとき、千羽鶴活動を担当されていた酒井先生に相談したことがきっかけでした。やりたいことがあれば千羽鶴活動でプロジェクトにできると伺い、もともと興味のあった被災地支援について考えることになりました。何回か打合せをする中で、先生から東日本大震災の語り部の方が出演されているテレビ番組を紹介され、何か参考になるかもしれないと考え、その番組を見てみました。番組を見たことで、今でも支援を必要としている人がいることや、語り部として当時の様子を伝えている方の存在を知り、この活動でサポートしたいと考えました。まずは、出演されていた語り部の方にお話を聞きたいと考えたのですが、全くツテのない状態でした。そこでインターネットでその方が所属しているところを探しお電話しました。お電話する際には、これまで関わりのない方に何をどう説明するばいいのか、とても緊張しました。お電話した際は自分たちの想いやこれまでの活動を伝えることができ、最終的にはその方と特別授業という形で最後まで関わることが出来ました。

② 当初は現地に直接行って支援をしようと考えていましたが、学校として前例がなく、安全面などの理由から難しいと指摘されました。そこで、東京にいながらできる支援の方法を模索し、特別授業という形で語り部の活動をサポートすることにしました。企画書の作成や当日の運営については、保護者の方もおよびする授業のため酒井先生からも細かく厳しい指摘が多くありました。指摘を受けて落ち込むこともありましたが、その都度改善を重ね、より良い形で書類を整え、授業をおこなうことができました。また校長先生をはじめ普段あまり接することのない先生方に相談に伺う場面もあり、多くの方と連携して進めることの難しさを学びました。

③ 実際にやってみて、初めはすぐに行動に移すことが難しかったり、賛同を得づらいことであっても、諦めずに意欲的に取り組むことで周囲を巻き込み、大きな活動につなげることができました。その中で周りの人に自分の意見を正しく伝える為に、物事を具体的に話せるようになったことや自分の行動力や粘り強さが形になった経験は、大きな自信となりました。

④ 私は将来、法学部に進学し、行政機関や司法機関に関わる仕事を目指しています。特に、正確な書類を作成し社会を支える役割を果たしたいと考えています。そのために、高校時代にこのような企画・実行の経験を積めたことは、必ず今後に生きると感じています。今回の経験を糧に、これからも社会に貢献できる人間になりたいです。

 

【桑原君】

➀ 東日本大震災の被災地支援活動に取り組んでるクラスメイトの一ノ瀬と原田の姿を見て、人の役に立とうとしている姿が魅力にうつりました。また、2人が休み時間などに支援活動について話しているのを聞いて、自分も何か誰かのために一つのことに取り組んでみたいと考え、途中からでしたが参加しました。

② 被災地支援活動をすすめる中で高校生の私たちにはできる事が思ったより少ないことに気づきました。初めの方では被災にあった語り部の加藤さんに来ていただいて講話していただくという形でしたが、費用の関係もありオンラインで加藤さんと繋いで、自分たちの進行も含めて講話していただく形になりました。自分たちで開催した授業が初めてな為、生徒や保護者の前での発表を悔いなく完璧にするためにリハーサルを重ねました。本番では緊張もあり早口になってしまったところもありますが、無事に終えることができて良い経験になりました。

③ 活動のゴールが、自分たちで特別授業を開催するということになったため、生徒や保護者が印象に残りやすいようにメンバーや先生でたくさん考えてきました。今まで誰かのためになるような考え方をしたことがなかったため、こうやって準備を重ねているうちに人のために行動することはとても大切なことだと気づけました。また、1.2年生の時は誰かの役に立とうという意欲はなく、正直に言うと不真面目な態度が多かったと思います。しかし、活動をすすめる中で一つのことに集中できる場面が増え、英検の取得、テストの点数向上などの勉強面や学校行事でも良い方向に進む事ができたため、先生方の評価も変わり、自分に自信がつきました。

 

【原田君】

➀ 誰かの役に立ちたいという気持ちがあったものの、具体的に何をすれば良いのか、どのように行動すれば良いのかがはっきりとわからず、迷っていました。そのため、まずは信頼できる友達や先生に相談しに行き、自分の気持ちや考えを伝えました。彼らのアドバイスや意見を参考にしながら、自分にできることややりたいことを見つけ出し、その結果、実際に活動を始めることに決めました。

② 初めは、現実的ではないと感じるような大きすぎる目標を掲げてしまったことや、高校生であるという立場や状況を考慮すると、限界があることを理解し、その目標を達成することが難しいため、断念せざるを得なくなったことがありました。しかし、加藤さんと出会い、東日本大震災のお話を聞き、このことを、自分たちの中だけで止めるのはもったいないと思い、1人でも多くの人に震災の恐ろしさを伝える、という新しい目標を立て直しました。そして土曜プログラム特別授業を通して自分たちの思いを伝えることができました。

③ 元々、人前で話すことが苦手で緊張してしまうことが多かったのですが、さまざまな場面で積極的に挑戦することで、その苦手意識を克服してきました。具体的には、千羽鶴のコアメンバーや先生方の前でスライドを使ったプレゼンテーションを行ったり、全校集会の場で前に立って話す機会を持ったり、さらに特別授業の中で自分の考えや知識を伝える役割を担ったりしました。これらの経験を通じて、次第に前に立って話すことに慣れてきて、自信もついてきました。

 

 震災から14年が経ちました。自然災害を避けることはできませんが、備えることはできます。そして、人と人とが声をつなぎ、支え合うことで、命を守る力を大きくすることができます。今回のプログラムを通じて得た学びが、今後の生活や社会づくりに生かされていくことを期待しています。

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